棚橋弘至

新日本プロレス 雑記

コンクルソ成功から学ぶ棚橋弘至の巻き込み力

2019年12月28日

コンクルソが終わる頃、気づいたら棚橋弘至のファンになっていました。

6月19日「KIZUNA ROAD 2019」埼玉大会。棚橋選手のバックステージコメントから始まった「第一回新日本プロレスコンクルソ」。

リング上でもアナウンスひとつ流れなかったこの異例のイベントは、累計投票数が18,002票というかなりの盛り上がりを見せ、SHO選手の優勝(初代ミスター新日本)、PIETERさんの特別賞で幕を閉じました。

改めて、ファンを含めた多くの人にプロレスラーの肉体のカッコよさ、凄さを知らしめる結果となったコンクルソですが、このイベントの成功で筆者が感じたのは、棚橋選手の"巻き込み力"が半端じゃないな、ということです。

始まりはただの「11月までに自分、身体を仕上げます!」宣言だったはず。それが敵対ユニットの石森太二選手やダンサーのPIETERさんまで巻き込み、これまでにない面白みに満ちた強烈なイベントになりました。

なぜ「新日本プロレスコンクルソ」はここまで盛り上がったのか。その理由を棚橋選手の持つ"巻き込み力"を軸に深掘りしてみたいと思います。

巻き込み力と達成目標

そもそも「巻き込み力」とはリーダーに必要な5つのうちの1つと言われる「周囲の仲間を取り入れながら物事を達成する力」のことを指します。

要するに「一人では達成が難しいこと」を「周囲を巻き込みながら達成する」力のことです。

今回、棚橋選手が達成したかったことは何だったのでしょうか。

よし、今日は全然、関係ないことを話す。『G1』、そしてその先に視線を向けると、『WRESTLE KINGDOM』が待ってる。そこに向けて、己のモチベーションを上げていくために、CMLLで秋に“コンクルソ”ってあるんですよ。ルチャドールによるボディービル大会。あれを、公式には新日本ではできないけど、11月、最初の後楽園ホールで、俺だけ仕上げていくから。俺だけ。SHO、YOH、石森、飯伏……覚悟しとけよ

出典:新日本プロレスリング

これは棚橋選手がコンクルソ構想を最初に口に出したバックステージコメントです。

コメント通りに受け取ると、達成したいことは『WRESTLE KINGDOM』に向けて肉体を仕上げること。つまりは『WRESTLE KINGDOM』の成功です。

2020年の『WRESTLE KINGDOM』はインテンヨン、イッテンゴの史上初の2連戦。プロレスファンにとどまらず、例年以上に注目が集まるであろうことは簡単に予想でき、新日本プロレスにとって今後を占う重要な大会です。

棚橋選手は著書「カウント2.9から立ち上がれ」の中でも述べていますが、選手の肉体の仕上がりで観客の期待感が変わってくることをよく理解していました。

この機会にしばらくプロレスから離れていたファンが様子を見に戻ってくるかもしれません。初めてプロレスに触れる人もいるでしょう。そんなチャンスを棚橋選手が見逃すはずがありません。この機会に、しっかり仕上げた肉体で最高の試合を届けなければならない。

しかし、40代に到達した自身の身体は基礎代謝が低下し、トレーニングの効果が現れにくくなってきたことも棚橋選手はよく分かっていました。

そこで考えたのが「コンクルソ構想」だったのではないでしょうか。

まわりを巻き込むことで自身の肉体を仕上げるためのモチベーションにする。
そして、あわよくば『WRESTLE KINGDOM』に向けて新日本プロレス全体の肉体作りに対する意識づけも期待できるかもしれない。
もちろん逸材のことですから、他にも隠れた目的があったかもしれませんね。

逸材による呼びかけの上手さ

CMLLで秋に“コンクルソ”ってあるんですよ。ルチャドールによるボディービル大会。あれを、公式には新日本ではできないけど、11月、最初の後楽園ホールで、俺だけ仕上げていくから。俺だけ。SHO、YOH、石森、飯伏……覚悟しとけよ

出典:新日本プロレスリング

棚橋選手の "巻き込み力" をまず感じたのがこのコメント。ここで上手いなぁと思ったのが

①意識する選手の名前を出したこと
②CMLLのコンクルソという大会を例に出したこと
③その上で "俺だけ" 仕上げていくと言ったこと

①で棚橋選手は4名の選手の名前を出します。これは、話の流れから「棚橋選手が身体の仕上がりで負けたくないと思っている選手」であり、「今のところ負けているかも・・・」と思っているということが伝わってきます。新日本プロレスの看板でありトップ選手からそう言われたら、悪い気はしませんよね。それに棚橋選手から認められているとも感じられます。

②わざわざ「コンクルソ」という大会名を例に出します。これはフィジーク(筋肉を鍛えバランスの良い肉体を競う大会)への出場経験を持つSHO選手、ボディビル(大きい筋肉を競う大会)への出場経験を持つ石森選手をかなり刺激したことでしょう。筋肉にこだわりを持ち、鍛え方を熟知した両選手にしてみれば大会となれば負ける訳にはいきません。

そして③。 " 俺だけ " 仕上げていくと宣言します。思わず「あ、ずるい!」と言ってしまいそうです。なんだかフライングでもされたかのような気分になります。

この発言を受けて、石森選手がさっそく参戦表明を行います。

ボディービル経験者の石森選手の参戦により、"大会"が現実味を帯びてきます。また、これによりフィジーク経験者のSHO選手にも火が付きます。コンクルソまで、特に開催日が発表されてからの2週間は、この2人がTwitterでの筋肉報告合戦を行うことでコンクルソの期待感を高めていきました。

相手を尊敬し、認めたうえで巻き込む。
これなら巻き込んだ相手もモチベーションの高い状態で目標達成まで一緒に走ってくれます。

協力してくれる会社への配慮

11月の開催とはならなかったものの、棚橋選手は12月4日に自身のポッドキャスト番組にて開催日と参戦選手の発表を行います。

SHO、YOH、飯伏、上村、辻、棚橋、石森、ヘナーレ。

すでに参戦表明している選手以外は、棚橋選手が直接声をかけられるヤングライオンや本隊の選手が中心となりました。また、開催日は12月20日。後楽園3連戦の2日目で『WRESTLE KINGDOM』に向けた本筋には影響が少ない日を選んでいます。

さらに審査用の写真撮影もリング上ではなく試合前に行い、投票も3連戦後に行うという徹底ぶり。あくまで重要なのは『WRESTLE KINGDOM』という姿勢を一貫しています。

この、選手や会社など様々な方面に向けた配慮も、コンクルソが開催できた要因でしょう。

開催前までは参戦する選手からの発信のみでもいいものの、いざ開催となると、最終的には告知・投票などの部分でどうしても会社に頼らざるを得ない部分が出てきます。会社自体も年内最大の『WRESTLE KINGDOM』という大イベントを控えているという状況。これをしっかり理解し、配慮した上で開催ができるように持っていったのは、さすがという他ありません。

協力しやすい状況をつくる。
これもうまく巻き込んで協力してもらうためには重要なスキルでしょう。

巻き込み力は想定以上に大きな成果を生む

こうして開催にこぎつけた「新日本プロレスコンクルソ」。最初は棚橋選手の構想でしかなかったコンクルソが、いよいよ正式なイベントとして開催されることになりました。

棚橋選手は当日にもまだまだ参加を呼びかけます。ここで反応したのが高橋裕二郎選手のダンサーであるPIETERさんと田口隆祐選手。

選手が肉体の仕上がりを競うイベントだと思っていた所に、ダンサーのPIETERさんの参戦。なかなか見られない展開にワクワクしたファンも多かったことでしょう。選手とはまた違った所にもファン・フォロワーを持つPIETERさん。選手だけでは「コンクルソ」の存在が届かなかった所まで情報を拡散してくれました。

"ワンパック"田口選手は独自の「新日本プロレス1人コンクルソ」をTwitterで展開。肉体の仕上がりを競う大会にプラスアルファのスパイスを加えてくれました。

この2人の参加により、さらに面白みを増した「コンクルソ」。

終わってみれば、
・SHO選手や石森選手という本格派
・飯伏選手という天然バランス型
・棚橋選手・ヘナーレ選手といったレスラー型
・上村選手や辻選手といった筋力増量中の若手
・田口選手のワンパック
・YOH選手のオシャレ路線
・PIETERさんの美しいヒップ
と、なんともバリエーション豊かなメンバーでの開催となりました。このいい意味での "ゆるさ" が「コンクルソ」に広がりを生み、より魅力的な大会になったと言えるでしょう。

投票に専門家の評価を入れなかったこともここまで盛り上がった要因でしょう。「身体のかっこよさ、凄さ、好き」といった、誰でも評価できる基準にしたことで投票のハードルが下がり、これだけの投票数に繋がったと思われます。

参戦の基準を設けず、投票のハードルを下げる。
このバランス感覚が絶妙で、ファンもろとも上手く巻き込まれたなぁという印象です。

コンクルソ大成功の意味

『WRESTLE KINGDOM』開催まであと1週間ありますが、「コンクルソ」開催の主な目的は概ね達成できたと言っていいんじゃないでしょうか。

棚橋選手も「コンクルソ」に合わせて肉体を仕上げてきました。他の選手も「コンクルソ」参戦組を中心に、『WRESTLE KINGDOM』に向けて身体を仕上げてきています。

また、「コンクルソ」を通して多くの人の元に「新日本プロレス」が届いたことでしょう。これはもう大成功といっていいと思います。

では、最後にこのイベントが大成功に終わったことで何に繋がって行くか。

まず、「コンクルソ」は第2回目以降も行われる可能性が出てきました。棚橋選手もポッドキャスト番組内で話されていましたが、より本格化した大会として、もしくはファンクラブイベントとしてバージョンアップして再び開催されるかもしれません。

また、レスラー発の企画が成功を収めたことで、他のレスラー発の企画が出てくる可能性が高まったと言えるでしょう。今回の石森選手やPIETERさんの参戦は、レスラー発の企画だからこそあり得たことです。公式の企画とは一味違った面白さがそこにはありました。今から楽しみで仕方がありません。

最後に

選手、会社、そしてファンまで巻き込み、成功を収めた「新日本プロレスコンクルソ」。

棚橋選手の "巻き込み力" というテーマで「コンクルソ」を深掘りしてみましたが、多くの人を巻き込み、成功に至った最も大きな要因は棚橋選手のプロレスへの情熱だと感じました。

相手の自分より優っている部分を認める、広い視野で様々な方面に向けた配慮が出来る、そして根幹にあるのは新日本プロレスを盛り上げたいという熱。それが伝わるコメント、行動。その熱は多くの人を巻き込み、目標に向かって進む原動力となる・・・

そんなこんなで、「コンクルソ」を追っているうちに棚橋選手のファンになっていました。元々ファンではあったんですが、さらに。


そして棚橋選手は『WRESTLE KINGDOM』に向けて新たな動きを見せましたね。

『WRESTLE KINGDOM』でクリス・ジェリコ選手に勝ったら、AEW世界王座選手権の実現。

棚橋選手ならジェリコ選手もAEWも巻き込んで、また新しい世界を魅せてくれるかもしれません。

ではまた!

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